
チェロ初心者が一度は思うこと「フレットが欲しい…。」

チェロの左手の練習が始まったんだけど、
押さえるところが少しずれるだけで、とたんに音程がずれちゃう…。

なんで、チェロにはギターみたいな
「フレット」
がないんだー!!
(引用:Wikipedia)

ふふふ、チェロを始めた人が叫ぶフレーズNo. 1だね笑(うさぎ調べ)
ギターみたいにフレットがあれば、振動する弦の長さが一定になるから音程が安定するよね。
フレットがないから、すごいんです

私も不思議に思ったので、先生に聞いてみたことがあるんだ。
なんとなく、
「フレットあるとかっこ悪い」
みたいなデザインによるものかなと思っていた。

そしたら、先生はこう答えたんだ。
「チェロは、いろいろな音の高さを自由に出せる楽器なんだよ。」
「フレットつけるなんて、もったいない!」
「ピアノよりすごいんだよ!」

え、ピアノは低い音から高い音まで正確な音程を出せるじゃない。何がすごいの?

意味が解らないよね。
あのピアノ様よりすごいって。
ピアノよりすごいの?~違いは和音の響き~

ドとミはきれいに響く和音として有名だよね。
けれど、ピアノでドとミの和音を作ると、
「ピアノは、きれいに響かない」
んだ。

???

細かい話は省略するんだけど、ピアノはドレミファソラシドを「均等」に12等分しているんだ。
でも音は複雑で「均等」に分割してしまうと「和音」がきれいに響かないんだ。
もしピアノで和音をきれいに響かせるには、ドとミの音程を微妙にずらす必要がある。
でもそんなことは無理だよね。

対して、チェロはフレットがないから音を均等に分割していない。
奏者の指使いで、和音が響くように調整できるんだ。
つまり、
「フレットがないから、
ドとミをきれいに響かせることができる」とね。

もしチェロにフレットがあったら、和音を響かせることができないのか…。
専門的には平均律と純正律の違い

専門用語では「音律」という言葉を使うそうなんだけど、ピアノは「平均律」の楽器、弦楽器は「純正律」と呼ぶそうだよ。
感覚的な違いとして、音が均等に分割されたピアノで弾くと「かっちり」しているれど、弦楽器は「自然や人間の感覚に近く」感じるのは純正律の楽器だからという人もいる。

また、下記の書籍では「ピアノはデジタル楽器」「弦楽器はアナログ楽器」と説明している。
著者の小方先生は物理学の教授の方で、加速器の研究をされている方なんだけれど、理系の視点で音律について解説してくれている。
その中で、こんなことが書かれているんだ。
(ちなみに理系の方なら、この本はかなりおススメです。ピタゴラスとかオイラーが出てきます。)
この分類によれば、ピアノのみならず、パイプオルガン、電子オルガン、アコーディオンなどすべての鍵盤楽器はデジタル楽器である。
弦楽器では、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスはアナログ楽器。しかし、エレキベースはデジタル楽器。ギターはデジタル楽器だが、三味線はアナログ楽器。(中略)
分類の基準がおわかりだろうか。音楽で使う音の高さはデジタル化されているといったが、このデジタル化された音高がそのまま出るように作られているのが、デジタル楽器である。
(中略)
弦楽器の中で、ギター、ウクレレ、マンドリンなどはデジタル楽器である。フレットがあるので、調弦さえ正確であれば、ドレミを出すのは容易である。ところが、バイオリン属の楽器(例外はヴィオラ・ダ・ガンバというバロック楽器)や三味線はアナログ楽器である。フレットがないので、狙った音を出すにはまず弦のどこを押さえるかをマスターする必要があるが、その反面、ドレミ・・・にとらわれない微妙は音高を出すことができる。

最後の「微妙な音高」が出せるのがチェロがすごいところなんだ。
少し高いレベルになると、曲を弾くときに先生から「そのミの音は低めに」とか、「ドは高めにとか」指導されることがあると思う。より細かく曲の豊かさや美しさを表現できるんだ。
これは純正律の楽器だからなせるワザなんだよ。

なるほど、フレットがないというのは弦楽器の「強み」なんだね。

そう、だから「変な音が出やすい楽器」ではなくて、「いろんな音を出せるすごい楽器」と考えるとポジティブなイメージになるよね。
こぼれ話

ちなみに、小方先生の本で紹介された「ヴィオラ・ダ・ガンバ」は見た目や弾き方もチェロみたいなんだよ。
でもね、この楽器にはフレットがある楽器なんだ。だから、デジタル楽器と呼んでいるんだね。
ジブリの「耳をすませば」でちらっと登場する楽器なんだけど、この楽器も美しい音色なので興味があったら聴いてみてね!
(引用:Wikipedia)